深圳の市場で働いてる若い人たちは、スマホのことを最先端の製品とかイノベーションとか考えてなくて、農産品の延長線上で考えてるんじゃないかな〜という話

 华强地铁商场

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スマホ部品=農産品

2016年10月撮影、場所は华强地铁商场。地下鉄の华强路駅の出口から直通の地下街っぽいところ。

スマホのカメラとかICとかフレックスケーブルを地べたとか適当な机の上で手作業で選り分けてた。若い女性はこんな状況でフレックスケーブル選り分けてるし、若い男性はタバコ吸いながら電子部品の入ったカゴを整理したりしてた。これ見て思ったのは、最先端の製品を扱っているという意識ではなく、電子部品という現代の農産品を扱うという感覚。

小学校の社会の授業で半導体は 産業の米 - Wikipedia って習ったけど、それを実感として持ったことはなかったが、確かにこの地では半導体が産業の米=農産品として取り扱われているように見えた。ICとかカメラとかの部品を個数管理せずにグラム売りしてた。

私のiPhone 5sは磁気センサのが壊れてるので、U16っていうICを交換すれば直るんだけど、そういうのがこういう市場で量り売りされてるっぽい。

www.youtube.com

私も工学的背景を持ってないのでよく分かってないけど、ESD対策とか品質管理とか皆無に見える市場なので産業分野のおじさんがみたら卒倒しそう。

大規模な工場だともっとちゃんとしてると思うけど、ここらの市場で扱ってるのは、ユーザー側の修理用部品なので、これでOKなんだろうね。中国国内は当然として、インドや中東から来たっぽいおじさんたちが部品買ってたので、おそらく彼らは彼らの地元のスマホ修理業者なのだろうと理解した。

通天地通讯市场

以下は通天地通讯市场。すごい活気だった。エネルギッシュ。たしか7F建てくらいのビルなんだけど、全フロアがこの状態。私が2016年10月に見た中で、深圳でもっとも活気があったのはこの市場でした。

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f:id:INOUETAICHI:20170507015808j:plainこれはiPhoneの液晶とガラスを貼り合わせるための装置。

鹏金山科技电子市场

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鹏金山科技电子市场の1Fの路面に面した店舗。真空脱泡気とかLCDをガラスに貼り付ける装置とか型枠とかを売ってた。

深圳歴史博物館(新館)

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深圳歴史博物館について

深圳の華強北にエキサイトした後は、深圳歴史博物館を観に行くと、現在の深圳の歴史的(+地理的)なロケーションについてのより俯瞰した視点を獲得できて更に面白いのでお勧めしたい。私は第6回ニコ技深圳観察会(2016年10月) のときに個人的に行った。

深圳改革開放史展示ホール

場所は、深圳図書館とか少年宮とか、あと最近MOCAPEっていうコープヒンメルブラウが設計した完成間近の現代美術館が建ってるエリア。深圳市民中(役所)の建物の中。

展示空間の区分けは、古代、近代、民俗誌、改革開放史に分かれているんだけど(古代、近代、民俗誌は、どこの県の博物館にもよくある感じのやつで、私は教養が無いのでそれほど楽しめなかった。)改革開放史のコーナーは世界中探してもここにしか無さそうなオモシロ展示でした。1980年の改革開放以来たった30年ちょっとの歴史を写真や現物資料やジオラマやブロンズ、蝋人形など使ってコレでもかと展示する力の入れようなのです。

深圳博物館の位置付けについては、伊藤亜聖さんのブログを読んで、私はとても勉強なりました。

aseiito.net

ということで、以下は私の小並感になります。

人が重いコンダラ状のコンクリートの丸太を転がして開拓スタート

伊藤亜聖さんのブログに書いてあるとおり、『「改革開放の第一の号砲」とも呼ばれている、蛇口の山を爆破』したあと、いきなり人がコンクリートの丸太を転がして開拓し始めたのがガツンと来ました。

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このブログ記事冒頭に土を耕す牡牛のブロンズの写真を載せてます。それは展示空間入り口の初っ端に展示されている奴なのですが、そのブロンズとこの男たちの写真は呼応してると思うんですよね。とても印象深い写真です。

1980年前後から、なにもない更地にいきなり都市を作り始めるところから展示が始まってます。

@tks さんも深圳歴史博物館はお気に入りらしく、曰く「深圳は壮大なシムシティ」 

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これは開拓当時に建築家が描いた華強北路(の国際貿易センター?)の完成予想図

ああこれさっきまで居た華強北だ。実現してしまってる。って思うと、ジーンとくるものがある。

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深圳的開發和經驗證明中國建立經濟特區的政策是正確的 鄧小平 一九八四年 一月二六日

深センの発展と経験は、経済特区の政策が正しいと中国が確立していることを証明します」 鄧小平の直筆の言葉がネオンサインになっててかっこよかった。

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改革開放を指導した鄧小平同志と一緒に記念写真も撮れるよ。

sp.ch.nicovideo.jp

展示されている人と物 

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改革開放から、開拓を経て、だんだん現代に近づいてくるにつれ、見覚えのある製品が歴史的資料として登場してきます。

博物館の展示のなかに、見覚えのある製品が歴史的資料としていきなり登場してくると人はビビります。

そして、たくさんの女工さんが手を繋いで写ってる写真や、女工さんの手帳や持ち物、展示されている製品を見てると、前日に @tks が案内してくれたSeeedやGenesisで働いてた女工さんや製品とオーバーラップしてきて、「いま俺は深圳の歴史を俯瞰的に見ていると思ったら、いつの間にかその歴史の中に、自分が過去に使ってたテレビやプリンターやビデオデッキ、ケータイ、スマホ、そして昨日、工場で出会った人や街の人たちを発見してしまい、つまりそれはこの歴史的展示物に接続された自分を発見してしまう」という再帰的な体験が生まれてくるので、ぞわっと鳥肌が立ってきたわけですよ。

深圳は今まさに最先端走ってるヤバい都市って評価を受けてますけど、この展示見たあとで、深圳の街や人や工場を見たときに、むしろ長い歴史の中の一地点として、そして産業を通じての日本に生まれた自分との関係性の中で、観ることができるようになると思う。そうすると、深圳の最先端の様相の中に、30年間の蓄積を想像できるようになる。

深圳改革開放30年分の蓄積に想像を働かせながらこれを読むと説得力を感じる。

オススメです。